その日は昼間でも外は暗かった。この辺りでは気化した水が空へ上がり雲というものになって空からの光を遮るため昼間でも暗くなることがある。しかも今日はその雲から水が水滴となって地上に降り注ぐ雨と呼ばれる現象も起きていたため、水滴が地面に打ち付けられるザーザーという音が外から聞こえている。クロスはここに来るまで雨も雲も実物は見たことがなかった。
リギーはクロスの前に座り彼の腕に優しく触れながら言った。
「ロウ・・・、クロス、ここで私たちと暮らしていくという選択肢もあるんだよ。」
クロスはその言葉に対して何も答えず少し寂し気な表情でただ一回大きくうなずいた。
その様子を見て説得は無意味だと感じたリギーは少しうつむいてからスッと立ち上がると
「あなたに渡しておかなければならないものがあるの。」
と言い奥の部屋に入っていった。
外からはもう何日もザーザーという音が聞こえ続けている。最初はただの雑音だったが今では居心地の良さすら感じる。
(雨も雲も今日で見納めかな・・・)
などと思っているとリギーは白い木の枝のようなものを持って戻ってきた。
「これはあなたの父親から預かっていたものだけど・・・、何かとても貴重なものみたいだけれど・・、もう返すことができないからあなたに渡しておくね。」
リギーが差し出した枝にクロスが手を伸ばすと枝にクロスの手が触れた瞬間突然枝は長い槍の先に二等辺三角形の刃を付けたような剣(?)へと姿を変えドシンという音を立てて床に落ちた。
クロスが少し驚きながら
「・・・武器?」
と聞くとリギーは戸惑いながら
「私もこれが何かは聞かされてないの。」
と言いながら剣(?)を拾い上げようとしたがビクともしない。
「あれっ?どうして?」
といいながらリギーは必死に持ち上げようとするがピクリともしない。
「あれっ?」とか「うーん。」とか言いながらリギーが徐々に本気になり始めたのを見てまずいと思ったクロスは
「ちょっとまって、これ、僕のものってことじゃないかな?」
そういいながら剣を持ち上げてみると重いは重いが何とか持ち上げることができた。
「ほら、やっぱり、これは僕のものだ。(この世界では自分のものという言い回しに一心同体や運命共同体のような意味も含んでいることが多い)短刀だけじゃ心もとないと思ってたところだからちょうどいいよ。」
そう言ってクロスはその剣を背負う形で装着した。柄と刃の長さを合わせるとクロスの身長をだいぶ超えるため背中から長い棒が突き出ているような恰好になった。
「じゃあ武器も手に入ったことだし・・・、行くね。」
それを聞くとまたリギーはクロスの前に座り心配そうな顔で言った。
「いい?戦魔に会ったら闘争本能を刺激するようなことは決してしちゃだねだからね。子供の小さい体じゃ一回蹴っ飛ばされただけでバラバラになってしまうから。あと深界は地界と違って昼間光は地面から出てくるの、目が効かなくなるから音とか魔素の動きに注意して、あと即術は・・・。」
しゃべり続けるリギーを遮るようにクロスが言った。
「リギーにみんな教わったよ。武器の使い方も魔法の使い方も。世界の特性、旅費の稼ぎ方、食べていいもの悪いもの、みんな教わったよ。」
それを聞いたリギーは涙ぐみながら言った。
「リーズには会っていかないの?」
クロスは少しうつむいたがすぐに頭をあげ
「会ったら決心が揺らぎそうで・・・。」
少しの間。
クロスは精いっぱいの穏やかな表情を作り
「・・・・じゃあね、リギー。」
そう言うと外へ歩いて行った。
クロスが外に出てしばらくすると後ろのほうから涙声で叫ぶ声が聞こえた。リーズの声だ。
「グロスゥゥ!!まだ、まだどっがで会おおねぇぇぇ!!」
リーズは母親のリギーをそのまま小さくしたような容姿でクロスより年下だが身長はすでにクロスと同じくらいだった。まあ族が違うから当然と言えば当然だが。
(もう身長のことを言われることもないのかな・・・。)
クロスは振り返らず右手をあげて軽く振ってみせた。
リギーはクロスの前に座り彼の腕に優しく触れながら言った。
「ロウ・・・、クロス、ここで私たちと暮らしていくという選択肢もあるんだよ。」
クロスはその言葉に対して何も答えず少し寂し気な表情でただ一回大きくうなずいた。
その様子を見て説得は無意味だと感じたリギーは少しうつむいてからスッと立ち上がると
「あなたに渡しておかなければならないものがあるの。」
と言い奥の部屋に入っていった。
外からはもう何日もザーザーという音が聞こえ続けている。最初はただの雑音だったが今では居心地の良さすら感じる。
(雨も雲も今日で見納めかな・・・)
などと思っているとリギーは白い木の枝のようなものを持って戻ってきた。
「これはあなたの父親から預かっていたものだけど・・・、何かとても貴重なものみたいだけれど・・、もう返すことができないからあなたに渡しておくね。」
リギーが差し出した枝にクロスが手を伸ばすと枝にクロスの手が触れた瞬間突然枝は長い槍の先に二等辺三角形の刃を付けたような剣(?)へと姿を変えドシンという音を立てて床に落ちた。
クロスが少し驚きながら
「・・・武器?」
と聞くとリギーは戸惑いながら
「私もこれが何かは聞かされてないの。」
と言いながら剣(?)を拾い上げようとしたがビクともしない。
「あれっ?どうして?」
といいながらリギーは必死に持ち上げようとするがピクリともしない。
「あれっ?」とか「うーん。」とか言いながらリギーが徐々に本気になり始めたのを見てまずいと思ったクロスは
「ちょっとまって、これ、僕のものってことじゃないかな?」
そういいながら剣を持ち上げてみると重いは重いが何とか持ち上げることができた。
「ほら、やっぱり、これは僕のものだ。(この世界では自分のものという言い回しに一心同体や運命共同体のような意味も含んでいることが多い)短刀だけじゃ心もとないと思ってたところだからちょうどいいよ。」
そう言ってクロスはその剣を背負う形で装着した。柄と刃の長さを合わせるとクロスの身長をだいぶ超えるため背中から長い棒が突き出ているような恰好になった。
「じゃあ武器も手に入ったことだし・・・、行くね。」
それを聞くとまたリギーはクロスの前に座り心配そうな顔で言った。
「いい?戦魔に会ったら闘争本能を刺激するようなことは決してしちゃだねだからね。子供の小さい体じゃ一回蹴っ飛ばされただけでバラバラになってしまうから。あと深界は地界と違って昼間光は地面から出てくるの、目が効かなくなるから音とか魔素の動きに注意して、あと即術は・・・。」
しゃべり続けるリギーを遮るようにクロスが言った。
「リギーにみんな教わったよ。武器の使い方も魔法の使い方も。世界の特性、旅費の稼ぎ方、食べていいもの悪いもの、みんな教わったよ。」
それを聞いたリギーは涙ぐみながら言った。
「リーズには会っていかないの?」
クロスは少しうつむいたがすぐに頭をあげ
「会ったら決心が揺らぎそうで・・・。」
少しの間。
クロスは精いっぱいの穏やかな表情を作り
「・・・・じゃあね、リギー。」
そう言うと外へ歩いて行った。
クロスが外に出てしばらくすると後ろのほうから涙声で叫ぶ声が聞こえた。リーズの声だ。
「グロスゥゥ!!まだ、まだどっがで会おおねぇぇぇ!!」
リーズは母親のリギーをそのまま小さくしたような容姿でクロスより年下だが身長はすでにクロスと同じくらいだった。まあ族が違うから当然と言えば当然だが。
(もう身長のことを言われることもないのかな・・・。)
クロスは振り返らず右手をあげて軽く振ってみせた。
PR
COMMENT
カテゴリー
アーカイブ